筆者は北京で旅行を学ぶ大学院生。妻は中国人。明るい話題の少ない日中関係ですが、将来に向けて建設的な提案を行なっていけたらと思ってます。末永くよろしくです。
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中国人の日本留学3:ニセモノ書類、裏技編

さて、予告していた究極のニセモノ作りです。
5.戸籍簿
戸籍簿のニセモノ、要はニセの人間を作ってしまおうというものです。作り方はいたって簡単で、戸籍を発行している地方政府や派出所を買収してしまうだけ。保護者のニセモノと本人のニセモノと二つあるのですが、順に解説していきます。

5-1.保護者の戸籍簿
保護者の収入が規定に満たない場合、前回特集した方法で通帳などを作る事ができるのですが、もっと手っ取り早く、保護者を取り替えてしまうという方法もあります。
例えば、留学を希望する学生「張君」と「李君」がいたとします。張君のお母さんはお金持ちですが、李君の家はお金がありません。この場合、会社は張君の留学書類を準備する際、張君のお母さんに関する書類一式を余分にコピーしておきます。その後、李君の戸籍簿を改ざんし、張君のお母さんを李君のお母さんに仕立て上げてしまうのです。中国は夫婦別姓ですから、お母さん関係の書類なら名字を気にする必要はありません。
こうすれば、ワンセットの書類で、二人分の経費支弁能力を証明する事ができます。もちろん、同じ入管に張君と李君の書類を提出するのは怖いので、張君が東京なら李君は大阪といった具合に分けて出す必要があるのですが。

5-2.本人の戸籍簿
作り方は保護者の場合と同じで、留学生を名前から偽造するものです。そして、僕が一番話したいのはこの問題についてです。
だらだらと述べてきたように、どんな書類でもニセモノを作る事は可能です。ではなぜ名前から偽造する必要があるのでしょうか。どんな人でも自分が20年来使ってきた名前に愛着はあるはず。学校会社で使う名前と、家庭に帰って使う名前を一生区別しなければならないのは、面倒くさいし苦しいはず。では、なぜ??答えは↓です。
(1)ビザ発給の際の出身地差別
ご存知の通り、日本では在日外国人の犯罪多発が問題になってます。そして中国人に関して言えば、問題を起こす率が高く、不法滞在率も高いのは圧倒的に福建省出身者。というわけで、入管は福建省出身のビザ申請者に対して、ものすごく神経を尖らせてるようです。具体的な数字は知りませんが、福建出身者に渡航が認められる可能性は非常に低い。そこで、戸籍ごと変えてしまって渡航を試みようとする人が出てくるわけです。うちの会社ではこういった顧客に対して、通常の5倍程度の仲介手数料を取って書類を作ってました。
僕はこういう学生にも日本語を教えていました。一人でも真面目な学生に出会えていれば、僕の見方も少しは変わったかもしれないんだが、残念な事にいい学生には一人もめぐり会えませんでした。同郷者を頼っていわくありげな仕事をしようとする目的の人ばかり。実際そのうちの二人は日本到着後に失踪したし…。一人の学生は授業中僕に「先生、一緒に偽装結婚の会社を立ち上げよう。報酬は山分けでいいから」とな。僕も甘く見られたもんだな。
というわけで、福建出身者へのビザ不交付に関して、僕は“現時点で”一抹の同情も感じません。
(2)ビザ不交付履歴者
日本には(どこの国もか…)、ビザを不交付にした人物のブラックリストが存在します。不交付理由などについても詳しく履歴が取ってあり、次回以降申請の際は厳しい審査が待っています。が、厳しすぎ。日本留学を希望する学生の間では「日本留学は一回勝負。一回拒否されたら挽回は不可能」が常識になってます。実際不可能ではないのですが、非常に難しい事は確かです。そして、これが学生をニセモノ作りに走らせる温床になっている。
英語圏への留学ならば、こんな面倒くさい事はしなくていいんです。イギリスがだめならカナダへ、カナダもだめならオーストラリア・ニュージーランドへと、国を替えて申請すればいい(中国からアメリカへの一般人の留学は、ほぼ不可能です)。でも、日本語を勉強する学生にとって、日本がだめなら次善の選択は存在しない。日本へ行けなければ、勉強してきた事は全て無駄になる。そこで、「ブラックリストに載っていない名前で」と考える学生が出てくるわけです。
僕の会社では、外部の学生は5倍程度の仲介料で、内部でビザ不交付を受けた学生には割引料金で、戸籍簿偽造を請け負ってました。偽造を手がける部長さんもお好きな方でしたので、肉体労働でお支払いになった学生さんもいらっしゃいましたが…。憂鬱。
閑話休題。留学を考える学生は、高校卒業後、大学に入る前である事が多いです。この時期の学生にとって再申請は時間的リスクが大きい。大学卒業生と違って「仕事をしながら申請」ということもできないし、半年も一年もだらだら待つわけにいかない。日本に行けないなら行けないで、中国の大学に入る準備をしなければならない。再申請したところで、留学が認められる可能性は非常に少ない。となると、名前を変えて…というのも納得がいく。
これに関しては、入管の制度不良だと思ってます。再審査を厳しくする事で、学生をニセモノ作りに追い込んでる。また、ニセモノ作りに追い込む事で、悪徳仲介起業を太らせてる。経験論から言うと、名前を変えずに再申請をしたいという学生は、まともな人間が多い。また、再申請に耐えうる書類というのは、ホンモノである場合が多い。審査方法の改良を切に切に希望してます。
(3)研修生
前々回も書きましたが、日本では三年以内の制限つきで単純作業労働者を外国から受け入れる「研修生」という制度があります。そして、この期間を終えて引き続き日本の大学で勉強したいという研修生も多いのだが、おかしな事にこういう学生にはほとんどビザが下りない。不思議で不思議でたまらない。理由を知ってる人、教えてください。
研修生に関しては、他に色々書きたいこともあるので、今後特集の形にしたいと思います。

最後まで読んでくれた皆様、ありがとうございました。書類のニセモノ作りについては、今回で最後です。
次回以降は、入管の日本国内の日本語学校管理と、留学政策について触れ、提言をしていきたいと思います。政策決定に携われる人が誰も見てないのが本当に残念ですが…。
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by t-kume | 2005-12-18 19:42 | 中国人の日本留学
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